平成2年(1990年)3月 滝高等学校卒業
平成6年(1994年)3月 東京工業大学 工学部有機材料工学科卒業
平成8年(1996年)3月 同 理工学研究科有機材料工学専攻 修士課程 修了
IEMT/IMC Symposium 優秀論文賞受賞
[所属団体]日本弁理士会、東京商工会議所
[委員歴]
日本弁理士会 関東支部 副支部長、知財教育支援委員会委員長、東京委員会副委員長 等、
日本弁理士会 知的財産価値評価推進センター副センター長、
知財経営コンサルティング委員会副委員長、ADR推進機構委員 等、
東京商工会議所 墨田支部 サービス分科会 副分科会長 等、
東京商工会議所 知的財産戦略委員会委員、中小企業の戦略的知財活動に関する調査研究会委員
を歴任
“弁理士になったのは?”
はじめから弁理士を目指していたのではないですね。もともと技術開発の仕事をしていて、その中で特許のことを知りました。その後、明細書を書くようになって、自分にあっているのではないかと思い、弁理士試験を受けました。
技術内容を文章で表す、理系(技術)と国語の両方が生かせる仕事であったことも大きいです。
“国語が得意なのですか?”
小さいころから理科が好きでした。物理とか、化学とか。なので、高校で理系に進みました。でも、国語は好きでした。
弁理士の仕事は、理系であり国語も好きな私には合っているようです。
“それは、理系か文系か悩むような人には良いですねー?”
はい。そして、弁理士の仕事は、配偶者が国内で他の地域に転勤となる等の事情があっても、同じ職業を続けたい方にお勧めできる仕事のひとつではないかと思います。
“今のお仕事内容は、具体的には?”
やはり出願代理業務、出願する企業(人)のお手伝いが中心です。
また、知的財産に関するいろいろなセミナーで講師もしています。皆さんに知財のことをよく知ってもらいたいので。 例えば、11月20日(金)には、東京ビックサイトで催される産業交流展のステージイベントの一つでお話しさせて頂きます。
https://www.sangyo-koryuten.tokyo/stage_event/
また、例えば、11月21日(土)には、江戸川区の産業ときめきフェア併設のものづくり体験コーナーで、日本弁理士会関東支部の知財教育支援委員会として発明工作教室を行います。こちらは小学校の中高学年のお子さんに特にお薦めです。最近の工作教室はキットを組み立てるタイプも多いと思いますが、発明工作教室では、自由な発想で発明してもらいたいので、ある課題を解決する物を、与えられた材料で作ってもらう方式で行っています。グループで競い合うということもありますが、発明工作は、子供たちの工夫がいろいろとあって面白いですよ。
出願代理も重要な仕事ですが、普及活動も重要だと思っています。
その他、知財は生み出すだけでなく、活用もして欲しいので、知財経営のアドバイスもしています。
また、知財の価値評価も行っています。知財の価値を評価する可能性のある場面はいくつかありますが、例えば、特許権を保有している債務者が何かのお金を返せなくなって裁判になった場面で、財産権である特許権について、いくらの価値があるか評価することがあります。
それから、外国出願や国内出願に関する助成金や発明コンクール等の審査員もしています。
新しいアイディアやネーミング・ロゴについての相談からビジネスを進めるにあたっての知財面のリスク回避についての相談まで、知財に関する相談を受けることも多く、相談者は、中小企業やベンチャー企業が多いですが個人の方もいらっしゃいます。その他、新入社員向けの知財教育もあります。
“知財関係でいろいろなお仕事をされているのですね。一番やりがいがあって面白いのは?”
新しいアイディアや新しい事業展開の話を聞けることが楽しいです。その点では、とても前向きな仕事だと思います。
これから権利をとろう、自分のアイディアや商品を世の中に知ってもらいたい、新しい事業をしたい、商品に誇りがあってブランドを保護したいといった明るいお話しが多いので。だから楽しいのだと思います。
特許の場合は、発明を文字で表現するのですが、“そうか、文字であらわすとこういうふうになるんだ”って言ってもらえることも嬉しいですね。
さらに、相談に来られた方が、弁理士と話すことによって、より発明の内容が深まったり、さらに新しい技術上のアイディアに気付かれて新しい発明に繋がったり、良いネーミングを思いつかれたり、認識されていなかった商標の力に気付かれたり、また新しい事業展開の可能性に気付かれたりと、相談者の「気づき」に繋がったときもやりがいを感じます。
“それはまさに共同発明者になるのでは?”
いえ、アイディアの核となる部分を創作されるのは発明者であって、すばらしいのは発明者です。弁理士の仕事は、発明者をサポートする黒子の仕事だと考えています。
弁理士は、新しい発明や新しいネーミングのような、新しいことに好奇心がある方が向いていると思います。一方で、勉強がきらいな人は、あまり弁理士に向いていないかもしれません。技術は日々進化しますし、法律も毎年のように変わりますので、常に勉強が必要となるからです。
“常に勉強ですかー?”
高校生の娘が、学校の授業や課題について、これって何に役立つの?とよく聞いてきます。
自分のこれまでを振り返ると、勉強していたその時には気付かなかったけど、今になって役に立っていることが多いなと感じています。
例えば、弁理士になる前、開発の仕事でやっていた電子ペーストの技術、例えば、粘土、ガラス、樹脂などを実際に触って作ったり測定したりして身についたこと、学生の時にやっていた実験や、その実験のためにプログラムを作ったことも役に立っています。その時は必要に迫られてやっていただけのこともあるのですが。発明は、1つの単独の要素だけでできるものは少なく、いろいろな要素が重なりあって完成することが多いし、様々な分野の発明の相談を受けるので、発明を理解するうえで、今までいろいろと経験してきてよかったと思っています。せっかく学んでも忘れてしまったこともあるし、まだまだ勉強が足りていないと感じることも多いですが。
“子供達などに伝えたいことは?”
知財授業を受けたり発明工作に参加したりした子供達が、その時に楽しいと思ってくれたら、それだけで十分なのですが、もし頭の片隅に残っていて、将来、いつか何かの役に立ってくれれば、さらに嬉しいなと思います。
それから、私は、たくさんの周りの方々に、いろいろな形で支えていただき、応援してもらっているおかげで、お仕事を続けさせてもらっています。そのことにとても感謝しています。
ますます、頑張って下さい。お忙しい中、取材協力をありがとうございました。
2015年9月取材
(文責:S57卒 佐宗美智代)